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不思議工房症候群「ひとりぼっちの誕生日」
         ~語り:樱井孝宏

01-
日常で起こる些細で不可思議な出来事、それが人の思考と行動に与えていく勝手(過程)と結末を知りたいとは思いませんか。この物語はあなた自身の好奇心と願望に基づいて構成されています、ともすれば身を通ししまい (見落としてしまい)がちのいつもの風景のなかに、あなたが不思議工房を見つけることができるようにお手伝いしましょう。




02-

電話が鳴った。出勤前のあわただしさの中で、僕は面倒くさいと思いながらも受話器を取った。「もしもし。ああ、君が。今忙しいんけど。え?誕生日?僕の?ああ、今日だっけ。でも、別になにもしてくれなくていいよ。一日いちいち電話かけてこなくてもいいから。え?どうしても会いたい?今日は無理だっていったじゃないか。じゃ、もう、仕事いくから。」乱暴に受話器を置いた。彼女からの電話だった。夕べもあった。この忙しい時にと思いながら、玄関を飛び出した。自分の誕生日なんか、すっかり忘れていた。それよりも仕事だ。今日はでかい契約がある。これが成功したら、僕は間違いなく昇進する。動悸同期の連中の悔しげな悔しがるかおが目に浮かぶようだ。へん、あんなやつらに負けてなるものか。何たって僕はエリードトなんだから。大学卒業後、大手商社に入社して、二年になる、僕はここで出世の道を掴む、そう心に誓って仕事に打ち込んできた。ライバルを押しぬけ、とにかく前へ前へと突き進む。手段は選ばない、それが僕のやり方だ。一方で、仕事しかのうがないと思われるのが得策ではない。仕事に遊び。それに、私生活をも充実しているように見せなければ、この競争社会、信頼を得てる抜きん出るのが難しい。得意先の人間とは、徹底的に遊ぶ、どうせ会社の経費だ、いくら使っても結果さえ出せば問題ない。朝まで飲んで、羽目を外すことだって、当然仕事の一款一環だ。余要は、得意先に僕がは愉快で親しみやすいやつだと思わせればいい。彼女だって当然必要だ。性格正確に言えば、彼女くらい作れない男は仕事が出来ないと思われても仕方がないことからだ。年をとれば、妻帯者の方が信頼度が高い。だから、婚約者の方が聞こえないこともある。だが、注意点もある、社内恋愛は極力避けなければならない。分かれた時の相手の出方私大次第で、社内表現が評価を下げることかが、考えるからだ。出世のさまためさまたげとなる。彼女がは常に外に存在する方が都合がいい、何かあった時の面倒もはない、友達も厳禁だ、特に社内には必要ない。深く似にも心を許して、足元を救われる掬われる可能性があるからだ。社内に社外であっても、一緒に遊んだりする時間が惜しいだけだ。出世して、社会的地位を築きあげる、それだけが僕の望みだ。他には何も要らない。その為に必要なものだけがほしいのだ。


03―

「おはようございます!」朝の挨拶も元気な方がいい。その方が上司に受けがいいからだ。今朝もスマウートに決めてやる、何だって今日は大仕事があるからな。準備も昨日の内に完璧に済ませてある。午後3時に先方のオフィスに出向けばそれですべて片付く。契約が済んだら、夜が祝賀会だ。部長達がねぎなっていたねぎらって(労って)くれる予定だ。午前中に彼女から携帯に電話があった。「またか、忙しいといってあるのに。」電話に出た僕に、彼女はどうしても今日中に会いたいという。夜はだめだ、主役の僕が祝賀会を抜けるわけにはいかない。どうせ午前御前さまになるにきまっている。今日は無理だと説明しても、彼女は急用だからどうしてもという。電話を切ろうとしたら、泣き出した。「これだから女って奴は」これ以上長引くとかえって面倒のことになると思い、昼休みに会うことにした。人目につかないように会社から少し離れたビルのレストランを選んだ。何かにつけ、細心の注意が必要なんだ。彼女がは暗い表情をしてやってきた。なんだか思いつめたような感じがする。嫌な予感がした。「とにかく話だけ聞いて、早く切り上げなければならない。」そう思っていった矢先彼女は突然なんだ用をぶつけてきた。話を聞けば、両親に見合いをせまられたという。結婚を約束した人が言ういるから断ろうとしたらその人間に合わせろうといったらしい。それが出来なければ、田舎に帰ってこいというのだ。しかも。両親が状況して来るのは今日ではないのか。「なぜ早く言わない」と窘めると。ここのところを会ってもくれないし、電話でも録音をろくに聞いてくれないと逆に言い返された。しかも、今日は僕の誕生日だから、一緒に祝うつもりっていったのに、時間も作ってもくれないっと。まあ、確かにそうだが、しかし、よりによって今日はまづいまずい。嫌いや、今日だけじゃない、まだ結婚するには早すぎる。まったく、面倒な話をもちこんだでくれたものだ。今の僕はそれどころじゃないのに。面倒くさくなった。「お見合いすれば?」あっさりと僕の言葉に彼女の顔色はが見る見るうちに変わった。彼女は涙声で「どうして」と言った。僕はそれには答えずにデンピ伝票を取り席を立った。仕方がない、仕事優先だ。それに彼女の代わりはいくらでもいる。「じゃ、元気で」そのまま立ち去る僕の背中押しに彼女の覚えずおえつ(嗚咽)が聞こえた。面倒を起こすタイプの女じゃない、それだけは付き合う家庭過程の中で確認済みだ。ひとしきり抜けば、素直に諦めねて、見合いにすることになるだろう。そうだそのほうが、彼女のためになる。僕にとっては今は仕事だ、速く会社に帰って戻って、契約に出かける準備を品けらばしなければならない。僕は彼女を残したままレストランを後にした。


04-

オフィスに戻るとなんだか午前中と様子が違うことに気づいた。みんなは僕と視線を合わそうとしない、なんだか不愉快になってきたが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。デスクにもどったところで、部長に呼ばれた。まあ、契約準備の再確認だろう。今日は僕が部長と課長に伴って、先方に出向く手初となっている。
僕:失礼します。
ドアをノックして、部長室に入った僕はそこで不穏な空気を感じた。部長と課長のほかに、同僚の一人がいる。「何でこいつがここにいるんだ?」僕が怪訝な顔をしていると、部長がきっぱり言った
部長:残念だが、今日の契約はきみではなく、彼と行くことになった。
頭をハンマで殴られたような衝撃に僕はショック状態に落ちいた。全身がわなわなと振るえ、顔面がぴくぴくと痙攣している自分でも分かる。
僕:なぜ~ですか?理由を説明お願いします。
そういうのがやっとだった。今回の契約を取り付けるのに、僕がどれほど苦労をしたのか、お前らは分かっているのか。いたい何ヶ月かかったと思うのか、この契約で、うち能書がどれだけ容積を上げられると思うんだ。僕に感謝こそする、こんな集中をうけるいわれはない!僕の表情を指したのだろう。部長が重い口を開けた
部長:先方が君とは契約しないといってる。君にあまりいい印象を持っていないようだ。わが社としても、この契約がかならず成功させたい。分かってくれるなあ。
僕はそれ以上抵抗することもできずに、部長室を後にした。「そんなばかな」という思いが頭を駆け巡る。「何がまずかった、どこで失敗した?全てが完璧だったはづだ。もしかしたら、誰かの技かもしれない。僕を落としいれ誰かが?そいつは誰だ?僕の仕事を奪ったあの同僚のやつか?きっとそうだ、そうに違いない。しかし、先方だと言ったぞ。そうか、分かった。あいつが暗いやんとに僕の悪口を告げぶちに違いない。そうだ、そうに決まっている。」部署を戻るとみんなが哀れげに僕を見ていたのが分かった。「やめろ!そんな目で僕をみるな!僕がお前なんかに同情されるほどにちぶれちゃいない!頼むから、そんな目で見ないでくれ!僕はそのまま会社を出た。

05-

さぞかしい絶望的な顔をしているのだろう。ふらふらと歩く僕をそれ違う容赦なくちきさす。不意に声をかけられた。
「よ、久しぶり」といて近づいていく男は見覚えがある顔だった。
僕:お前は~?
大学の同期だったやつだった。すぐに顔が赤くなる対人恐怖症、いや、女性恐怖症だったか。とにかく無視ずに走る。見ていていらいらする奴だったことを覚えている。だが、今目の前に立っている男が、およそそんな記憶とは無縁だ、あわやかな人間だった。隣にマタニキーを着て女性が連れている。見るからに幸せそうな新婚カップルだ。こいつ本当にあいつなのか?女性恐怖症じゃなかったのか?じろじろ見る僕の視線に答えるように、彼は笑っていた。「自分達が結婚したんだ」と。
僕:へえ、お前女性恐怖症じゃなかったっけ。
皮肉をたっぷりと込めて、隣の妻も聞こえるように言ってやった。そういえば学生時代、ずいぶんとこいつをからっかしたことをいも出だした。しかし、彼は妻と顔を合わせるなり、くっすりと笑った。おまけに「お前辛そうだな」と言いやがった。僕がきえた。「何だ、お前にそんなことを言う筋合いはない。落ちこぼれたあんたに。」彼はやれやれといった顔をして、こちらが聞き持ちもない、自分達の話を始めた。「僕たちは不思議工房で出会い、幸せになった。今は何もかも充実にしている、お前も頑張れよ。」そういい残して、僕を背を向けした。屈辱だった。悔しさに血管が切れそうな思いだったが、一方で、彼が言った不思議工房という言葉に気に入った。結婚相談所かお見合いサークルかなにかが。それにしてもよくあの女性恐怖症が治ったもんだ。ふん、幸せになってよかったなあ。捨て台詞のような独り言を吐き、僕もその場を離れた。夜の祝賀会がなくなってしまったが、かといって、彼女に頭を下げるのが御免だ。どいつもこいつも悪い。まだこんな時間か。くそ!パチンコでもして、一層離すか。店内は略満席だった。タバコの煙で、視界が霞む。何とか開いている台を見つけて、打ち始めたが。まったく頭が入られない。パチスルをやって見たが、数字なんか揃いやしない。向きになってやていたが、ふと、吾身の情けなさにいやけざした。どうして僕は朝から代理しがみついているような連中と一緒になってパチンコなんかやってなかればならないんだ?くだらないたらありゃしない。「面白くない!」店をでると、ようやく夕暮れに指しかかったところだった。暇をもてことがないから、こういう時、何をしていいかよく分からない。酒でも飲んで帰るか。吐き捨てるように言って、目の前の赤提灯のおれんおくるた。「いらっしゃい!」店の主人の勢いが癇に障る。時間が早いのせいか、店内には他の客の姿がない。適当なテーブル席を選んで、どっかと腰を下ろしビールを頼んだ。酒はずんぶん鍛えた、少々足ったら承継が失うことがない。しかし、この日はそれがかえって仇になった。いくら飲んでも酔えないのである。「くそ!」赤提灯をでたが今度は行く先に困った。なじみの店にいくてもあるが、会社の経費ならいざ知らず、自分の金を使うのがばかばかしい。それでなくても、今の自分の姿を顔をみしすえさらすなんで、まっぴらだ。当てもなく歩いていた。歩いてみたところで、なにもない。ただ、いつもの町の風景があるだけだ。「帰ろう。」諦めて、家の方向に足を向けると、奇妙な看板が目に入った。戸板に筆で殴り書いたような文字で僕は「あ」っとこえを上げた。「不思議工房」と書かれている。とっさに、同期の彼の言葉が思い出した。「僕たちは不思議工房で出会って、幸せになった。」ちょっと興味を持った。何とか道場のような看板と古びた家、およそ近所の学習塾しか見えない「不思議工房」はきっとお見合い塾みたいなものだろうと思った。

06-

多少の暇つぶしになるか、そう吐き捨てて、僕はがたづく引きドアを開けた。中はがらんとのように思えた。目を凝らすと、奥にカウンターらしき大机があった。机越しに座っている人影が見える。僕はつかつかとそこに歩み追った。人影は老人だった。辺り見回したが、商品らしき物が見当たらない。やはりお見合い塾か、サークルの類だろう。すると、老人が眼鏡を置しに僕を見上げて、低い声で言った
老人:ご注文ですか?
僕はカウンター前のパイプ椅子に腰を下ろすとかなり横柄な態度で言った。僕:ちょっと、聞きたい事があるんだけど
老人:どうぞう。
老人は落ち着いた様子だった。
僕:前に女性恐怖症の奴がここに来なかった?あいつ何を買っていたの?
老人:幸せを買っていかれました。
僕:はあ?
僕はぷと噴出すと今度は大笑いを出して笑った。
僕:ふん、ははは、こりゃいい。あいつはここで女と幸せを買っていくわけだ。ははは~
老人:そんなに可笑しいですか?
僕:だって、そうじゃないか、こんな怪しいところで見会いをするなんて、あいつらしいじゃないか。
老人:ご注文がなければ、お帰りください。
老人はいたって冷静だった。僕は笑いを止め、老人に顔を近づく言った
僕:いや、注文がある。ここでは幸せを売っているんだろう、俺にも分けてもらえるんだろう、幸せと野郎。
老人:では、これに住所とお名前、ご注文をお書きください。
老人は僕の態度を気にも止めない様子で、紙と鉛筆を差し出した。
僕:何これ?
それは「注文書」と書かれた白紙に近い紙。それにどこもあるような鉛筆だった。
僕:注文書なのに鉛筆なのにボールペンがいいじゃない?
あまりに適当な常識だったので、皮肉を込めていった。
老人:鉛筆で書いた文字がいずれ消えていくものです。幸せとはそれほど果敢なく尊いものです。
丁寧な言葉遣いだが、面倒くさそうにも感じられる。早くしろうとやんばかりと受け取れた。なんだかむかついてきた。何尤もらしいことを言っているんだ。そんなのこじつけに決まっているんじゃないか。そう思いながら、ふんと鼻を鳴らして注文欄に『出世』と書いた。僕の幸せがそこにしかない。お見合いのたるいを扱っている業者には到底無理の注文だ。
老人:かしこまりました。
老人がいとも簡単に言って、費かを起こして渡した。ご注文の品は後ほどお届けします。
僕:出世を届けるだって?どこまふざけた業者なんだ。まあ、お手紙を拝見ていくか。
僕はせせら笑っていた。
僕:支払いはどうするの?
老人:後払いの成功報酬となっております。
僕:ふん~
どんな仕組みが分かりませんが、余は僕が出世出来なければ払わなくてもいいわけだ。出世すれば、いくらでも払うしな。正に出世払いだ。こりゃ、益々楽しみだ。

07-

不思議工房を出た。なんだか少し愉快な気分になって、飲み直そうと思ったら、おあつらいむきに、ショットバーの看板が目に入った。この辺では見かけたことのない店だったが、少し引っ掛けていくには丁度いい。そう思って、雑貨ビルの階段を下り、ベルのなるドアを押し開けた。目の前がすぐカウンターだ、客らしき男が一人酒を飲んでいる。カウンターの奥で、マスターがシェーカーを振っている。僕はその男の隣に腰を落とし、ジンをロックを頼んだ。暫くすると、男が話しかけてきた
男:よ!一人か?なら一杯奢るぜ。今日は俺の誕生日なんだ、祝ってくれ。
普段なら、見知らずの男と会話する気はもうとうない。だが、その男の『誕生日』と言う話を聞いて、僕は少し話す気になった。
僕:僕もだ
男:おお、そうか、そいつはおめてたい。お互い一人ぼっちの誕生日のわけだ。
男:よし。徹底的飲もう。
男と飲むうちに、こいつは意外に気直やつかもしれないと思った。大手の企業に勤めていて、出世することが大事だと言う、その為には何だったやってやる。彼はそう言った。きょうぐと考えのにとめた同士ということで、僕たちは盛り上がった。そのうち彼がもっといい店での見直そうと言って、ここを出ることにしった。彼の言い方にマスターが嫌な顔をしたが、まあ、酒の席だし、気にいしないことにした。勘定は彼が払った。どうせ会社の金だからと言って笑った。店を出ると、彼が自分の馴染の店に行こうと言い出した。人の馴染ということは自分の馴染ではないから、羽が外えないなと、頭の片隅で思ったがたまには人に従うのがいいだろう。

08-

繁華街のややこぎりがビルの上の階にその店があった。どこにでもあるのようなクラブだ。僕がいつも接待で利用している店とさほど変わらない。それほど下世話な店じゃないし、高級感もある。店に入ると、女の子たちが出向かいてくれた。席に着くとウィスキーのボトルが出てきた。僕たちはすでに相当量のアルコールがはいていたが、勢いでまた飲み始め、女の子達と騒いだ。一頻り飲んでいると、僕はだんだんと自分が不愉快な気分になっていることに気づいた。店の女の子はみんな彼の周りに集まって、はしゃいでいる。僕の隣にも一人いるけど、無口なのか、乗り気がしないなのか、あまり口を開かない。僕が自分が一人ぼっちのような気がしてきて、無性に腹が立った。何だ、楽しんでいるのはあいつだけじゃないか。やっぱり人の馴染の店にいたって、面白くもなんでもない。それに、もっとこちに気がつかてもいいんじゃないか。自分だけ楽しいけりゃいいなんて、本当にあきらなやつだ。こんな奴と少しでも気が合うなんて考えた僕が馬鹿だった。
僕:もう出よう。
僕がそういうと彼は『まだいいじゃないか』と言って、もう一人があがりする。こっちの気持ちに気づく気配がさえもない。しゅうてんが近いからといて席をたとあとすると、さすがに彼も仕方がないと言った風に感情を始めた。勿論金持ちだが,領収書を切っている様子を見れば、べつに心がいたみない。どうせ会社の経費だ。店を出てずんずん歩いていると彼が後ろから追いついてきて、言った
男:どうした、ずいぶんご機嫌ななめだな。
僕:そりゃそうだろう、自分だけだの楽しんでりゃいいてもんじゃない。
男:はあ?何を言っているんる?こういうところに来て楽しまない遊んだろう。楽しめる奴は馬鹿なのさ。
僕:なんだと?
はらにすえかいてにじりようになると彼がせせら笑うように言った
男:可笑しいなやつだなあ。お前だってしょっちゅうやっているんじゃないのか?友たちもいないって言うから、この俺様が付き合ってやってるんだぞ。感謝それこそする、文句なんて言う筋合いはないだろう?
僕:友たちがいないわけじゃない、作られないんだ!
そう言い返すと彼は冷たい目で言った
男:作らないじゃなくて、出来ないんだよ。お前の友たちになろうなんて愁傷な奴はこの世にいるのか?
僕:き、貴様!
こんなつは殴ったってかまわない、そう思って、拳を振り上がったやさきにハプニンがなおってきた。気づくと、彼の前に女性が立っている。泣きながら、彼に何かをうったいている。僕はやり番がなくなった拳を下ろすと、呆然とその光景を見詰めた。痴話げんかんのようだった。察するに別れ話を切り出された彼女が男にすがっているようだ。それにしても、彼女が必死の様子だった。よほど彼のことを好きなんだろう。『分かれたくない。』をれんっぱつしている。暫くすると、もみ合いになった。
僕:おい、寄せ!
僕は見かげて声をかけたが、その時にはもう彼女が突き飛ばされたあとなんだ。ろうじょにうずくなっておえず彼女をしりみみ彼は歩き出した。その後追いつけ、肩をつかんたんだ。
僕:なんて乱暴なことをするんだ!
彼は冷たい目をして、振り向きざまに言った
男:代わりはいくらでもいるだろう。
僕:こ、この野郎!
どうしても許せない。そんな感情がふっとあいて、しょうど的僕は彼に殴りかかってきた。しかし、僕の拳はあっさりとかわされ、勢いで地面に転がってしまった。その火気ばらにけりんが吐いて僕がのたうち回った。彼のせせら笑いが聞こえる。
男:へへへへ、本当にどうしようもない奴だなあ、お前は。自分のやってることをたがみあるいて、人を非難する立場があるんとおもっているのか。
僕:う、う、う~
呼吸ができな、僕はうずくなっているのが精一杯だ。『そうだ、お前にいいをこと教えてやろう。お前が気づいていないだけの、とっても面白いはなしなんだ。
僕:な、何を?
男:いいか、どんなにエリードとしてだって、所詮俺たちががちっぽけな存在なんだよ。出世、地位、金、名誉のために人を蹴落とすことに必死になって、そんなくだらないことに息を住している。他人を信用出来ないから友達が作らない。そのくせ昇進ものだから、いつも人の目を気になる。ここから笑ったことがない、そんな俺たちが本当に出世して人の目に立てると思っているのか?
くそ!声が出ない、こいつはいったい何を言いたいんだ。
男:俺の上になあ、裸でいてこんなに面白い人間がいな。お前もそう思わないか。くだらないことに必死になってじ人間こそ自分が滑稽なことにきづかない。そんな俺たちの存在は一言と言ったら、何だと思う?
返す言葉がない。幾分呼吸ができるようになったが、こいつもやつかに勝てる気がしない。
男:ギャグなんだよ。
僕:ギ、ギャグだと?
男:そうさ、周りのみんなそう思っている。陰で笑い、同情し、さげすみ哀れている。それが気づかない俺たちの存在はギャグそのものじゃないか。こんなに面白い人間は他にいるか?どうだ、お前も面白いだろう?これが笑わずにいられることか?俺は可笑しくてたまらまいね。あ、はははは。
僕:ゃ、止めろ。
男:俺もお前もギャグなんだよ。
僕:や、やめろう!

09-

はっと気づくと、そこは最初に入ったショットバーのカウンターだった。あわてて辺りを見回すが、あの男の姿が見当たらない。目の前にマスターがいるだけだ。あれ?いつの間にか、僕が寝ってしまっていたのか。恐る恐るマスターに尋ねてきた
僕:あの,先まで隣にいた男は~?
すると、マスターが怪訝そうな顔をした。
マスター:何を言っているんですか?今夜のお客さんはあなた一人だけですよ。それより、そろそろ弊店時間なんですが~
店を出て歩き出した僕は、それでもなんだか納得できない気分だった。可笑しい、僕は夢でも見ていたのか?それにしては,あまりにリアルな夢だ。生々しい感触だって残っている。わきばらに手を当ててみると、ずきっと痛みが走った。やっぱり夢なんかじゃない、これはあの男にけられたせいだ。きっと気を失った僕をあの店に運んではがいない。警察ざたになることをそれて、マスターと共謀して,僕をはねやがたんだ。くそっ!何って奴だ!明日になったら、あの店にもう一度行って、どこのどいつが調べてやる!絶対に許せないぞ!そこまで考えて、僕はあることを気づいて、ふと足を止めた。待てよ、あいつ、どんな顔をしてだっけ?あれだけながくいたのにあいつの顔が覚えだせない。それじゃ、見つけられないじゃないか?顔が分からなければ、とぼけられてて、おしまいだ。そんな馬鹿な、なぜ覚えだせないんだ!暫く考えたが、どうしてもはっきりしない。もしかしたら、本当に夢でも見ていたのではないかと気さえしている。『そんな馬鹿な。』僕は独り言を言って、今日のところは考えをやめることにした。少し酔いが回ったけだ。明日になれば思い出せるだろう。そう自分に言い聞かせて、家を急ぐことにした。明日からの仕事に、どう取り組めば分からないが、とにかく疲れていて眠かった。

10-

自宅マンションのドアを開け、電気をつけると、奥のリビングのテーブルに何か置いていてあるのが見えた。そばに行くと、それがバースデーケーキとそれお囲むようにきれいに並べられた料理だった。どうやら、彼女が来ていたらしい。まちくたびれで、帰ったのか、そう思いながら、急にむしゃむしゃしてきて、僕はそれをテーブルを落とし繰り返した。『こんなもの!』がしゃんと音を立てて割れるテーブルガラスと、飛び散る無残なケーキや料理の姿を見て、僕は益々息苦しくなった。これは僕へのあてつけか?一人ぼっちの誕生日を祝ってあげるとでも言いたいのか?そうやって、僕をかげて、笑いるのか?もう、うんざりだ!興奮したからだを鎮めようと、僕は洗面台に向かった。顔でも洗ってもう寝よう。今日は本当に酷い一日だった。しかも、こんな日が誕生日とは。洗面台に立った僕は、そこで『あっ』と声を上げった。すぐ目の前にあの男がいる、あの男の顔がある。今はっきりと思い出した、あの男に違いない。あいつは、あいつは、僕だ。がくんと足を折り僕はその場にうずくなった。鏡の中の自分を見て、ようやく気づいたことに、自然と笑いをこめた。『へへへへ~、ははははは~』僕は笑い続けた。これは可笑しい、こんな面白いことはめったにない。そうだ、あいつの言う通りだ、自分がこれほど滑稽な存在だったなんて、初めて気づいた。こんな僕に、会社が大事な契約を任せるはずがない。そんなことにいまさら気づくなんて、僕はなんて馬鹿なんだろう。同僚立ちが部長室から悲壮な顔をして出ってきた僕を哀れな姿を思い出した、大学の同期の『お前、辛そうだなあ』の言葉を思い出した。そうだ、僕のしていることは全てギャグにしか見えないんだ。笑いが止まらなかった、笑いすぎて、涙が出た。そのままふらふらとリビングに戻ると、飛び散った料理の間に、おひ手紙が見えた。彼女の字だった。

『暫く待っていたけど、余計なことをしてと、また怒られそうだから、今夜が帰ります。勝手に上がり込んじゃって、ごめんなさい。見合いの話が断りました。両親は怒ったけど、あなたのことは好きだから。でも、あなたの将来の邪魔をするつもりはありません、きちんとお別れをい言っただけなの。今まで、わがままな私と付き合ってくれて、本当にありがどう。お仕事頑張ってください。happy brithday.お誕生日おめでとう。』

手紙にポツリと涙が落ちて、彼女の字を滲ませた。僕は開いている方をてで、ちらわったケーキのかたまりをくちにほうまった。甘いものが苦手なことの知っているくせに。そう思ったが、口の中のケーキはほろにがかった。誇りが混じってじゃりじゃりいう感触が余計ににわさを切り立たせた。涙が混じって塩辛い、後から後から涙があふれてきて、彼女の字が判別できないほどに手紙が濡れた。彼女に会いたい!そうだ、今すぐ会って謝ろう,許してけれるかどうかが分からないが、今僕の気持ちを伝えよう。君を必要なんと、僕はもっと素直に生きるんだ。

11-

玄関から飛び出した僕は、ふっとポストーから覗く一通白い封筒に気づいた。彼女からの手紙と思ったら、表書きに『請求書』と書いてある。差出人が『不思議工房』となっていた。封を開けると、中には次のような文がしるされていた『あなたの幸せがお届けします、穴だが人の役に立っていきなさい。それを代償として、生涯はれる続けようご請求申し上げます。--不思議工房』外はもうすっかり夜が明けていた。すがすがしい青空が目の前に広がっている。僕はその封筒を胸ポケットに大事にしまうと,世界に向けて,新たな第一歩を踏み出した。それから僕は、何度か彼女を誘って、不思議工房を探してみたが、二度とあの看板を見つけることは出来なかった。


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