先貼張小石的玉照再說XD

哦哦哦~~ 這張真得好可愛呀~~~*Q*

咳嗯...好....正文開始XD
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cast:
奇拉——石田彰
路西安——森川智之
伊莉絲——巖男潤子
撒瑪拉——飛田展男
傑納斯——增谷康紀
迪蘭——松本保典
瑪爾拉——山崎和佳奈


原作——吉原理惠子
插圖——波津彬子


逝くさ、なのみの正義を振りかざし、人としての道義も朽ち果てる。
逝くさ、第一を搖るがす軍馬の蹄鐵は地獄の亡者の咆哮であった。
策略と關係による、裏切り、そのはての混沌、盡きることのないやぼうはそこなしの憎をいざない、
きょうきが人を蝕み、そして、深深と魂さえもえぐる。そんな血なまぐさい戰いの火中から頭角を現し、またたくまに他を制壓し、後に近鄰諸國はゆえに及ばず、遠く北はラツカ、東はルーデン、西のカナンのハテまでもその名をとどろかせ、ジオウの霸王とおそれられたアスランゲイルから數えて七代目、父ギジェット母シアグクが相次いでみまかり、グルシアン·ゾルバ·ラソレルはあまかの期待ようになって、15の若さでジオウ皇帝を即位した。
そして二年後、媚を嫌い、よにおもねず、わが定めはわが手で切り開くごうきと共に、ししおおルシアンはその日、17歲の誕生日を迎えた。

〔人々の騷ぐ)
女の一人:さあさあ、急いで急いで、今夜はルシアン樣の17かめのご誕生祝いのご宴席です、
     手を休めているお暇はありませんよ。

少年A :どうしてルシアン樣好きの僕たちまで、ぎんぱようみがいたりしなきゃならないだろう。

少年B:そうだよな。こんなの高級のじじょうの仕事じゃないか

少年C :キラのやつが惡いんだよ。賴まれると何でも「ハイハイ」って引き受けてしまうんだから。

少年E :あいつルシアン樣にちょっと可愛がられているからって生意氣だよ。
     元あらつかのしかんのちつぢかなんだか知らないけど、ここじゃただの父なし子のくせに、

少年F :そうそう、いくらキラの母上がルシアン樣の乳母だったからって、
     それだけにこしょうにたてられるなんて、ずるいよな

少年G :あいつ、母上がなくなってから、誰もうしろ盾がいないだろう、
     だからなんとかルシアン樣に取り入ろうとして必死なんだよ、きっと。


女の一人:ああ、キラ、食台はこちらに。

キラ  :これで、よろしいでしょうか。

女の一人:結構よ。では、後も同じように賴みましたよ。

キラ  :はい、分かりました。

アスナス:キラ。

キラ  :あっ、アスナス樣。なにか?

アスナス:陛下のお姿が見えぬが、どこに行かれたか知っておるか

キラ  :ルシアン樣は遠乘りにお出かけになられました。

アスナス:またか、今日だけはお控えになられるようあれほどお願いしておいたというのに。
     まったく、困ったことだ。それで、とものものは誰だ、デイランとサマラか?

キラ  :はい。そのように伺っております。

アスナス:あやつらめ、掃ってきたらもう一度きつくしかっておかねばなるまい


ルシアン:あぁ、うまい、生き返るようだ。
     このあたりまでくると、さすがに大氣のにおいも違うな

サマラ :ルシアン樣、もうそろそろお戾りになられませんと

ルシアン:なんだ、サマラ
     來たばかりで、もう掃る心配か

サマラ :なにぶん、日が傾きかけておりがすれば

ルシアン:構わん
     どうせやることはいつもと同じだ

デイラン:ですが、いろいろお支度も終わりでしょうし
     後でまた女官庁どのにくどくどと叱られては構いませぬ

ルシアン:お前もだれぞに似て、だんだん口あかましくなってきたな、デイラン

デイラン:恐れながら、それが近衛のつとえと存じます

ルシアン:每年每年
     型にはまって變わりばえのせぬ宴などおもしろくもおかしくないわ
     第一、重臣のじじどもがなにかといえば宴にかこつけてどこぞの姬はどうだろう、
     氣にいった娘はいないかなどといらぬ世話ばかりだ、

デイラン:ルシアン樣、お腹立ちはごもっともではございますが

ルシアン:私はまだ17だ、やりたいことは山ほどある
     今から幼繼ぎを生ませれるための種馬になるつもりなどないわ

サマラ :このご氣性だ
     重臣方の氣持ちもわかぬわけではないが、
     每回成功法のごりょうしでは反發するなというのが無理なのだ
     まあ、とにかく
     アスナス樣の特大の雷を落ちる前にそろそろお掃り願わねばな

ルシアン:だが、まあいい
     じじどもがそのつもりなら、二度と余計な口をたたけぬよ
     今宵こそきっちりそのはなをあけしてくれるわ


(人人騷ぐ)
シャガルラの國の陛下より、バハード產牝馬十頭·······

デイラン:おお、これはまた見事な佛頂面だな

ジェナス:なにがだ、デイラン

デイラン:なんだ、ジェナス、お前が宴席に顏を出すなど珍しいではないか
     今夜もまた部屋に閉じこもって、
     怪しい丸藥作りに製を出しているとばかり、思っていたのに

ジェナス:たまにはうまいものを食べて
     じおうをつけないとな
     この宴のかたがたほどでもないが
     すしも對外の勝負なのでな
     で、誰が見事な佛頂面なのだ?

デイラン:ルシアン樣がだ

ジェナス:なるほど、確かに

デイラン:遠乘りから戾られて、湯浴みの間中ずっとキラをあいてにぐちっておられたそうだな

ジェナス:如何ルシアン樣でも、退屈な無視だけは苦手なのだろう

デイラン:退屈が講じて、爆彈發でも飛び出さねばいいんだろうな


キラ  :ルシアン樣、お酒をお持ちいたしました

ルシアン:そう言えば、キラ、お前からはまだ祝いの品をまらってはおらんな

キラ  :あっ、はい、なにかお望みのものでもございますか?

ルシアン:望めば、なんでもくれるのか?

キラ  :はい、できます限りは。ルシアン樣のためならちょっとくらい無理をしてもいいかな
     だって13になったばかりの僕、こしょうに推舉してくださったのはルシアン樣だもの

ルシアン:そうか?では、お前の操をもらおう

キラ  :おっ?

ルシアン:望めば何でもくれる、と言ったぞ、よいな

キラ  :でも

アスナス:お醉狂もほどほどになされませ
     とぎをお召しでしたら、女官長を命じて、だれぞを選んではべられます

ルシアン:私はキラがほしいと言ったのだ、そのほうらが選んだお式製の娘など何の興味もないわ

アスナス:ならば、ほかのごしょうにんなされませ
     かりにもキラは乳兄弟です、ルシアンさま

ルシアン:それがどうした?アシアが私の乳母だったからといって、何のはばかりがある?

アスナス:ですが

ルシアン:くどいぞ、アスナス
     今宵のとぎにどうでもキラを出せぬとごねるなら、今後一切奧には行かぬ
     種馬ではないからな、私は。どうする?アスナス?
     私はどちらでも一向に構わぬのだぞ


キラ  :どうししょう?どうししょう?ここまで來てまさか逃げ出すわけにはいかないし
     女官長のシリール樣はルシアン樣のお言葉のままにとおっしゃったけれど
     でも、僕は何を、どうすればいいんだろう

ルシアン:〔笑い出した〕どうした?キラ?
     いつまでも扉の前にへばりついたままで、誰も取って食いはせぬぞ
     じじどもがふたことめには何やかやと、うるさく言うのでな
     一發かましてやったのだ、見たか、アスナスのあの苦蟲の嚙み潰したようなつらを

キラ  :じゃ、やっぱり、あれはいつものお戲れだったんだ

ルシアン:ここにこい
     あのようなさけの席であんな風にお前を出しに使うつもりはなっかたのだ、すまん

キラ  :いいえ、ルシアン樣のお役に立てたのなら僕はうれしいです
     お誕生祝いの品は改めて何か

ルシアン:誰でもよかったわけにはないぞ
     望めば何でもくれるとお前が言ったからだ
     私はこのまま戲言で終わられるつもりはないのだ

キラ  :ルシアン樣

ルシアン:なぜだろうな
     お前のことを思うと、血が騷ぐ、體中の血がうずいて、眠れなくなる
     キラ

キラ  :い、いぃや

ルシアン:キラ、何も怖いことはない

キラ  :で、では、お放しください、お願いでございます

ルシアン:私は嫌いなのか

キラ  :いぃえ、で、でも、あの

ルシアン:ならば、お前の目も唇も、この銀の髮も全て私のものだな
     私のものになるということはな、キラ
     これを、こうして
     ?可愛がってもらうことというのだ、キラ、キラ


アスナス:ルシアン樣はまたキラを慎重にいりぐたっているのか?
     いったいシリール殿は何をやっているのだ


シリール:見目麗しい娘を選んでとぎに差し出しても見る氣もなされないのですよ
     そんなことをすればまるで當てつけるように何日もキラに慎重にこもってしまわれて
     これ以上何をどうせよとおっしゃるのですか


キラ  :誰になんと言われてもいぃ
     僕はただルシアン樣のそばにいて、ルシアン樣と同じものを見ていたい
     このデアファールカ以外に僕の家はなく、ちつぢを賴るみうちもいない
     そんな僕をルシアン樣だけが必要だといって下さる
     ならば、僕は心をこめてお使えしたい
     でついづ、おごらず、よこしまなよくにながされることなく
     その以外、何も望みがしないから


ルシアン:互いのひとみに移るおもいは深く激しく
     何の打算もないというところか
     はじめは口うるさいだけの重臣方に對するただのあてつけだとばかりおもっていたのだが
     なんとも厄介なことになってしまったものだ


人間、誰しも欲得ずくで人を愛するわけではなかろう、周りはどうあがいても
日彼がわずにはいられない、そんな運命としか言いようのない出會いも確かにあるのだから


キラ  :體を重ねてささやくぬつごと、甘美の酒と同じだ
     幾度酒付きを重ねても盡きることはあるまい
     だが、美酒のみ過ぎれば毒になる
     だからといっていまさら誰がそんな說教がましい台詞を口にできるというのだ
     いったい誰が


ルシアン:お前がよい、キラ
     お前だけでよい
     お前しか要らない


デイラン:どうした、キラ
     16にもなってそんなへっぴり腰では情けないぞ
     もっとわけがしめろう
     いこみあまい
     右、左、いいんじゃない、ほら、足はもっと速く

ジェナス:おお、意氣迂みが違うとさすがにのみこみがはやいな
     少しは樣になってきたのではないか

サマラ :よいのか、ジェナス
     弟子たちが藥草つみにせいを出しているというのに
     こんなところで膏を賣っていても

ジェナス:そう言う、お前はどうなんだ、サマラ
     懷刀早々をかってにであるっては執務を屆こうって
     陛下がお困りになるのではないか

サマラ :そのルシアン樣が樣子をみて來いとのおうせいでな
     口出しはせぬとおっしゃられていない
     ご自分で足を運ばれるのははばかられるらしい

ジェナス:なるほど
     うちにみなまきずの絕える間がなければ
     いかにルシアン樣といえども氣が氣ではないというところか

サマラ :己のことで
     ルシアン樣に余計な負擔はかけたくないというキラの氣持ちも分からぬではないだな

ジェナス:それも仕方あるまい
     何しろ、この三年ルシアン樣のご寵愛を薄れるどころか
     ますます深くなるばかりだ
     そうなればまたそれを嫉む妒くなも多くなる
     デイランがいうように
     今のうちにきっちりとしたぼうごんの技をえとくしておいたほうが賢明だろう

サマラ :ルシアン樣にしてみればいたしっかいをしっというところなのかも知れぬだな

ジェナス:ぬくぬくとまわたて包まれて愛されるよりも
     まず、自分の足できっちりと立っていたい
     それがキラの男として、いや、人間としての矜持なのではないか

サマラ :だが、ジェナス、人の心を時ともに移り行くというものだ
     私はそれがうらめにでた時のことを考えると
     ぞっとする

デイラン:ほらほら
     めをそろすな、たっているぞ
     まだまだだな、キラ

キラ  :申し譯ありません

デイラン:次はみをぐぬちだな
     同じ時間にくればいい

キラ  :はい、ありがとうございました


ルシアン:キラ

キラ  :ルシアン樣、もう、、、、、、

ルシアン:まだ、まだだ

キラ  :ルシアン樣


ルシアン:きつかったか

キラ  :いぃえ

ルシアン:1月もお前に觸れなかったのは始めだったな
     手加減できなかった

キラ  :それで淡いかかでございました

ルシアン:今のところ大事ないが、あそこのとりでは西の要でもある
     目は常に光らせて置かねばなるまいな

キラ  :では、またいらっしゃるのですか

ルシアン:いや、とりあえずアジマを差し向けようとおもっている

キラ  :ア、アジマどの、でごさいますか

ルシアン:なんだ、アジマを知っているのか

キラ  :あっ、はい。デイラン殿の代わりに結構つけていただきましたので

ルシアン:そうか?ならば、デイランと違って、少しは手加減をしてくれただろう

キラ  :このやのかたがたは皆さんはみっちりしごいてくださいます
     おかげで、ようさくさまになってきたと譽めていただいておりますが

ルシアン:だが、怪我をせぬよう、ほどほどにな、
     お前のこの手は、劍を持つより豎琴をつま彈くほうがずっと似つかわしい

キラ  :アジマ殿はソリテガに、
     まさかルシアン樣はイリス樣とアジマ樣のうわさをご存知なのでは


少年H :しいたのいずぎで、イリス姬樣とアジマ殿が口付けなさってたらしい

少年I :なになにに、ご姬の緣談の話もでておろうこの大事なときに
     身ほど知らずによほどが
     陛下のお耳に入りでもしたら、どうするつもりなのだ

女A  :身份違いの戀など、不幸の始まりでございますのに
     でもやはり、おちつぢは爭えませんだわね
     まさかイリス姬樣まで道ならぬ戀にみようやきになられるとは


キラ  :いや、ご存知はないはずだとおもうけれど
     でも、このままではきっといつか


キラ  :今ごろイリス樣はサドリアンで
     でもほんとにこれでよかったのだろうか

イリス :分かっています
     この思いがかなうはずはないのだと分かっているのです
     でも、分かってはいっても、どうにもならないの
     キラ、あなたなら私の氣持ちもわかってくれるでしょう

キラ  :わが身のことを思えば、
     いまさら差し出がましい口など聽けるはずもないのはよく分かってはいるけれど

イリス :だから、せめて夢でいいのです
     それよりほかの何も望んではいけないのなら
     ひと時な甘い夢をみていたいのです

キラ  :ひと時の甘い夢か
     若美につまされるようですよ

イリス :お願い、キラ
     今夜遲くにはもうあの方はジオウを發ってしまわれるの
     だから、最後にもう一度だけ、お願い
     サドリアンでお待ちしておりますと、あの方に伝えて

キラ  :イリス樣


ルシアン:そうか?モリガンはアドリア伯爵の末の姬を娶るのか?

デイラン:はい、少し年のひらきがございますが、なかなかの熱愛ぶりにございます

キラ  :ルシアン樣だ

ルシアン:ああやつもとうとう年貢の納めるときのようだな

デイラン:そのようです

ルシアン:まあ、めでたいことには違いない
     乾杯の酒の一杯でもほしいところだな

サマラ :では、このまま久々にサドリアンまでいらっしゃいますか、ルシアン樣

ルシアン:そうだな、それは惡くはあるまい

キラ  :あぁ、大變だ。サドリアンの方へいかれてしまう
     何とか、何とかしなくては


キラ  :イリス樣、イリス樣、イリス樣、キラです

イリス :どうか、したのですか

キラ  :ルシアン樣はおいでになります、もうはやく

イリス :えっ?兄上樣が

キラ  :アジマ殿がお先に掃れたのか、よかった

イリス :キラ

キラ  :さ、參りましょう

イリス :キラ、待って、もう走らないわ

キラ  :イリス樣、もう少しです
     この茂みをぬければ
     何?あっ?

サマラ :なにやつだ?キラ?イリス樣?こんな夜更けにいったい二人で何を

デイラン:サマラ、しておろう

ルシアン:デイラン、どうした?

デイラン;あっ、いぃぇ、それは

ルシアン:キラ?何をしている?イリス?

キラ  :ルシアン樣

イリス :兄上樣

ルシアン:お前たち、どういうことだ
     これは


イリス :知られてしまうわ、兄上樣に、全て知られてしまうわ、どうすればいいの

シリール:ルシアン樣、お待ちください、ルシアン樣

ルシアン:うるさい、道路をさがっておれ

ルシアン:ソレル王家の姬をいつから遊び女如きになさったのだ、イリス

イリス :キラ、キラ、助けて、お願い

ルシアン:いつからだ、キラとはいつからきち繰りあったのかと聞いている

イリス :兄上樣

ルシアン:イリス

イリス :お願い、キラ、助けて、助けて、兄上樣にうまくとりなして、お願い、お願いよ、キラ

ルシアン:なけば許されるとおもうな、イリス、お前もキラと一緒に牢につながれたい
     裏切りは絕對許さない、覺悟しておけ


ルシアン:闇にまぎれてイリスとサドリアンで合びきとは、な
     飼い犬に手を嚙まれるとはこういうことか
     私の目を盜んでようもうやってくれたものだ
     
     始めてとぎをめいじた時、お前はまぐあいないみすら知らなかったな、キラ
     あらから三年、お前の身も心も全て私のことだとおもっていたが
     まさか、いまさらお前に女が抱けるとはおもはなんだが

キラ  :違う、ルシアン樣、お願いです

ルシアン:なぜだ、たえろ、デイラン、たえろ、ばかげてこんなことは許されることではない


サマラ :ことは既に動き出してしまったのか
     いまさら後戾りはできぬ
     われらは大儀面分のためにキラを見殺しにするのだからな

アスナス:よいな
     もとはといえば、姬の輕はずみがぐごうがまねいたこともてんまつだ
     この際姬にも、それなりの土牢をかぶっていただく

デイラン:しかし、それではあまりにキラがいったい何の落ちとかあるというのですか

アスナス:大事の前のしょうじだ、そのような瑣末なことなど構っている暇はない

デイラン:一人の一生の問題がなぜ瑣末のことなのです

アスナス:今までも、そしてこれからも、キラがおそばにはげっている限り、
     ルシアン樣はどれほど美しい姬に身にあっても目もくれまい
     今年二十歲も過ぎたというのに、妻を娶るどころか、女子の肌にも觸れぬご寵愛ぶりだ
     このままではソレル王系の血が絕える

サマラ :そのために、イリス樣ともどもキラを身ごろしい生をとうせいですか

アスナス:そうだ、今はまだその兆しはないにしても、
     この先キラの存在がせいどうを左右するしごりになるやも知れぬ
     ならば、禍根の根はたっておぶのが進化としての當然のつとめであろうが

サマラ :そのためならば、人としての兩親は捨ててもよいと

アスナス:二つがならびたたぬなら、兩親を捨てても大儀をとらねばならぬ
     決斷とはそう言うものだ

デイラン:人の道にはずれた大儀であってもですか

アスナス:大儀は大儀だ、それ以外の何者でもない
     いずれごごんぎが整えばイリス樣はこの國から出て行かれるご身份、ならば
     ジオウの輝く將來のためにキラにはどうでも捨石になってはもらわねばならぬ
  
サマラ :それで、心にどれほどの傷を殘そうともですか

アスナス:傷は時とともにいつか癒えるものだ

サマラ :傷はいつか癒えるか、みさきに誓いごろじんはいともかいたにいってくれるものだ
     そんな保証がいったいどこにあるというのだ


ルシアン:イリスと二人してようもう裏切ってくれたものだ
     ただせめころすだけでも飽きたらぬか

キラ  :イリス樣、僕の言葉をもうルシアン樣の心には屆きません
     だから、お願いです、ここにいらしてください
     どうかルシアン樣の前で、はっきりおっしゃってください

ルシアン:二度と女を抱かぬようにしてくれる

キラ  :サドリアンでのことはただの勘違いだろうと、
     イリス樣の口からどうか真實をおっしゃってください

ルシアン:私を欺いたその目をつぶして、その口が二度と戲言を吐かぬよう
     したを切り落としてくれるか
     その上でどこぞのいんばい宿にでも賣り飛ばしてやろう
     目も見えず口が聞けずども男をくわえこむしりのあなひとつあればよかろう
     いんばいにはそれが似合いだ

キラ  :まさか、どうして信じてはくださらないのです
     ならばいっそう死ねとおっしゃってください
     それすら許されるとおもわれるなら、すべて、今ここで僕を殺してください
     愛しています、イリス樣を愛しています、命をかけて愛しております
     イリス樣とそいどけることができないのならば、この命惜しいとはおもいませぬ

ルシアン:この下種が

キラ  :愛しています、心のそこからイリス樣を愛しています

ルシアン:默れか、イリスのためなら命もいらぬというなら、僕は切り捨ててくれるわ

デイラン:ルシアン樣、劍を、おおさめください

ルシアン:放せ

デイラン:ルシアン樣

キラ  :愛しています、愛しています、愛しています

ルシアン:サマラ、キラをだまらせろ、だまれ

キラ  :ルシアン樣

ルシアン:デイラン、ジェナスを、ジェナスを呼んで來い


衛兵A :どこへなりとうせろ、頭のご命令だ、
     こんなことをいってもただの氣休めにしかならないのだろうが
     命があっただけ運がよかった、そう思うことだ


キラ  :ジオウの都だ
     はぁ、二年ぶりだ
     あぁ、ほんとにかえってきたんだ


古より全ての物語は人と人の出會いに始まる、
出會うことの喜びとよきせいの分かれの悲しみがよくもあしくも時を刻んでいくよう
真實は偽りをはらい、偽りの中に真實は潛み
わずかに根ずれた愛をはざまで定めの扉はゆうるると開かれるのだろう
物語が始まる、人のようの悲喜こもごもが心を震わすその時に物語は始まる
愛の明朗をさまようものたちへ靜かなるべくいえのコメット


キラ  :ジオウの都は相變わらずににぎやかだな

某女A :まあ、な、出目ごとな銀の髮だろう、お日樣に透けてキラキラでかば燒いているようだよ

某男A :吟遊詩人かよ

某男B :それにしちゃうきれいなずらしてあがるぜ

某男A :おう方、どこかのぼずっら貴族のなれの旗だったりするんだろうかな
     まったく、もったいねい

某男C ;ほう、11弦の豎琴とはこれはまた珍しい
     ここらじゃめったにおがめんしろうもんだい


キラ  :晝前にはつけるかな
     あっ?だれ?
     マデリア宮殿の衛兵にもこんな森の奧まではめったに入ってこないはずなのに

ルシアン:マイラ、待って、またるか

キラ  :まさか

マイラ :ルシアン樣

キラ  :ルシアン樣

ルシアン:まったく、しょうのないやつだな
     シリールに知られたらどうする?
     またこごとをくらうぞ

マイラ :もうなれました

ルシアン:そうだな
     私もお前のそう言うかざらのところが好きだ

マイラ :私の方がもっと、ずっとお深くしておりますのに

ルシアン:マイラ

キラ  :何を、いまさら
     未練げに分かりきったことではないか

ルシアン:さあ、もどろうか

マイラ :はい

キラ  :どんなに深くえぐられたキスも側らに愛する人があれば
     いつかいえるものなのかもしれない
     ルシアン樣、二年ぶりのジオウの都の風景は何も變わってはいません
     けれど風のにおいさえ昔のままなのに
     歲月は確かに流れているのですね
     ほんとに、もう、緣の欠片ものこってはいないのだと
     母上、長い間墓參りを欠かして、申し譯ありません
     今の僕は氣ままなその日暮の歌うたいです
     たて頃のめいしであられた母上のまねごとで
     昔、ほんの手慰みをおぼえたことが今ごろになって役にたつなんて 
     おもってもみませんでした
     ご無沙汰のお詫び代わりにひとさわり聞いていただけますか
     あっぁ?イリス樣、デイラン殿、なぜ

イリス ;いつ、戾って、來たのですか

キラ  :母上の好きだったサラデイーナの花束
     あぁ、そうか、今日は母上のつきちがいの命日だった

イリス :キラ、わたくしは

キラ  :そうですね
     あのころは日々の幸せがいつまでも續くものだとおもっていたけれど
     これも母上のお導きでしょうか
     イリス樣、多分これで二度とお目にかかることはないとおもいますが
     どうそおすこやかに言葉を交わさぬ無禮は何どうぞご容赦ください

デイラン:姬、參りましょう

イリス :笑って頂戴、デイラン
     キラが足元に膝まついて許しをこうこうとさえできなかったわ


キラ  :ナーマの森は靜かだな
     星に手が屆きそうだ
     僕はただ靜かに眠れる場所を求めてジオウに戾って來ただけなのに


ルシアン:誰でもよかったわけではないぞ、キラ
     望めばなんでもくれるとお前が言ったからだ
     なぜだろうな、お前のことをおもうと、どうしようもなく血がうずいて、眠れなくなる
     お前は私のものだ、お前だけでよい、お前しか要らぬ


キラ  :今夜は眠れそうにない


亭主  :お前樣方、何なさるね

サマラ :ここの地酒でももらおうか

亭主  :はいよ

サマラ :ルシアン樣のごすいきょうにも困ったものだ
     狩場によくついでとはいえ
     こんな濱の片田舎まで足を伸ばさせるとは
     近頃都で
     何かとうわさの吟遊詩人がほんとにここに住み著いているのかどうかも分からぬと言うのに

ルシアン:ところで、亭主、うわさの吟遊詩人はここにも顏を見せるのか

亭主  :みよ、ま、ありゃえいれいがわりもんだよ
     普段はめったにここまでにおいでこねぃ
     くいもんがなくなるとやってきて
     裏の廣場で歌を聞かせるだ
     まったく商賣する氣があるんだかねいんだか

ルシアン:おう?ではうわさはやはりうわさでしかないということか

亭主  :そんなことはねい、都の耳やどうだかしらねいが
     飲み代削ってかねを払っても惜しくねいな

ルシアン:胸の奧底まで染み入るようだ
     いったいどんな男なのか
     キ、キラ
     サマラ、あれをここに引きずって來い

サマラ :なにぶんの人目がございますれば
     その氣はいかがと

ルシアン:くびになわうっててもだ

サマラ :はい
     るすいも非禮も重々承知の上で賴みたい
     少しばかり時間をさいてはくれまいか
     わが主がぜひにと

キラ  :サマラ殿
     では、ルシアン樣も
     參りましょう


〔人々騷ぐ〕
サマラ :おうせいのとうり、連れてまいりました

ルシアン:どの面下げてお前戾ってきた
     いんばいくずれが吟遊詩人の氣取るなど吐き氣がするわ
     即刻ジオウから出てうせよ
     二度は言わぬ次はその腕えし折ってくれるぞ、よいな


キラ  :まさか、こんな田舎町でルシアン樣とはちあわせをしようとはおもわなかった
     運命と言う厄病神はとことん容赦がな
     あっ、あ、あ、あ、胸が
     ルシアン樣、僕にはもう失うものなど何もありません
     今はただ靜かに眠れる場所がほしいだけなのです


アスナス:サマラ、ルシアン樣がキラにお會いにされたというのはまことのことか

サマラ :はい、例のうわさの吟遊詩人を一目ご覽になりたいと
     それがまさかキラだとは予想だにしておりませんでした

アスナス:うわさの出から察するに七のつき前というところか

デイラン:いえ、5のつきです
     私がイリス樣のおともで、墓地へ出かけたおり、偶然キラに遭いました

アスナス:馬鹿者、なぜもっとそれをはやく報告せぬのだ、

ワイデル:デイラン、そのようなことでこのえたいちょうどうして面目が出すとおもっておるのか
     たばけものめが

デイラン:いまさら、ことをあらだてる必要もないとおもいましたので

アスナス:キラの存在自體がことをあらだてる現況に決まっておるのではないか

デイラン:では二年ぶりに母親の墓前リに掃ってきたキラになわをうって
     即刻たたきだすべきだとおっしゃいますのか
     いかにルシアン樣のご命令とはいえ
     あのようなこと私は二度とごめんです

アスナス:もうよい
     起こってしまったことを今さら悔やんでも遲いわ
     二人ともさがっておれ

デイラン:では

サマラ :失禮いたします

デイラン:チエー、くそうじじどか
     いまさらしわずら突合せて議論してなになる
     納得いく答えなどできるものか

サマラ :そうかっかするな

デイラン:そういうお前はどうなんだ、サマラ
     できれば不安の目ははやめにつんでおきたいとおもってはいるかな
     說くくらわばさらまでだ
     それよりイリス樣はどんなご樣子だ

サマラ :ほそい食はますます細くなられたようだ
     イリス樣付きしっと女官のアズリ殿が心配しておられた

デイラン:ま、それも無理もあるまいかな
     正直な話、まさかあんなところでキラに再會しようとはおもわなかった
     配布をえぐられたかとおもったぞ
     イリス樣にして見れば針のむしろであったのよう

サマラ :それは私も同じだ、

デイラン:無樣だな。キラが戾ってきたというだけでみな慌てふためいている
     過去をむしかえされるのではないか、とな

サマラ :そうだな
     
デイラン:だが、いまさらすねに傷を持つみよなげいても始まるまい
     アジマが己の罪を償う覺悟でソリテアに骨をうずめるというのなら
     私たちも一連托生だ、闇に封じたものは二度と暴かれてはならぬのだから


ルシアン:吟遊詩人だとキラめ、なにをみせてくれるか


マイラ :ほんとにここのおはな畑はいつみてもきれい
     次から次にいろんなはなが笑いて
     こんなにきれいなんですもの
     少しぐらいいただいても構わないよね

アズリ :マイラ樣、なにをなさっているのです

マイラ :アズリ樣、あ、あのう、お花をいただくこととおもって

アズリ :一番笑きのレイファンはこんなに
     なんと言うことをなさるのです
     ここの花はイリス樣が丹精をこめてお世話になさっているのですよ

マイラ :ごめんなさい
     あまりにきれいなので、つい

アスリ :つい、ついではございません、
     一番笑きのレイファンはイリス樣の乳母であられたアシア樣の墓前にお供えするのだと
     姬樣がそれにお大事になさっておいででしたのに

イリス :アズリ、そんなに聲をあらげるものではありません
     レイファンならまだたくさんあるのですから

アズリ :ですが、イリス樣は

マイラ :申し譯ありません
     イリス樣のお花畑とは存じませんでした
     近頃、ルシアンのご機嫌があまりよろしくないようなので
     きれいなお花でも飾って慰めできればとおもいまして

イリス :そう、兄上樣の
     でも兄上樣はきっとここのお花はみなおきお嫌いでいらっしゃるわ
     特にそのレイファンは

マイラ :えっ?

イリス :兄上樣のお部屋に飾るのなら、ジャノの花園からお花を摘んでいてはいかが?
     今なら、ココレトの盛りですから

マイラ :でも、あのう

アスリ :マイラ樣、私が舎の花園にご案內いたしますので
     レイファンは私はお預かりいたします
     どうぞ、ついでいらっしゃってくださいませ

マイラ :では、イリス樣、失禮いたします

イリス :びっくりさせてしまったかしら
     でも、レイファンがだめなの
     だってレイファンはキラが一番すきだった花ですもの


キラ  :デイラン殿

デイラン:夜分邪魔をする

キラ  :どうぞ、なかへ

デイラン:用件だけ言わせてもらおう
     明日の夜、王宮でうたぎが催されることになった
     ルシアン樣の婚約者であられるマイラ樣の誕生祝もかねて、盛大にな
     ジオウの都の內外から芸人をまねえての祝宴だ
     その席に、うわさが高いハマーの吟遊詩人のうたを是非にとのごしょうもうだ

キラ  :宴の餘興に滿座にさらし者になれとおうせいですか
     そのような戲言をよく重臣方が許しになられましたね

デイラン:許すもゆるさぬもない
     ルシアン樣のご氣性ならば、お前もよく存知でいよう
     キラ、ハマーを出てこのアテイカの町にながれても、しょせん同じことだ
     ジオウの都にとどまる限り、ルシアン樣のめを逃れることができぬ

キラ  :つまにどの望まれたかたがいらっしゃるのに
     それでもまだなぶっりたりない、とでも

デイラン:ルシアン樣のお心のうちはルシアン樣でなくてわからぬ
     だから、キラ、このごにをよんでこんなことを賴めたぎりはないのだが
     ルシアン樣がなにをおっしゃられても何とか穩便におさめてくれまいか
     マイラ樣はなにもご存知ないのだ

キラ  :それはルシアン樣がお決めになられることです、デイランどの
     滿座のさらし者になっても僕にはもうなにも失うものなどないのですから


次はハマーの吟遊詩人でございます

イリス :キラ

シリール:キラですわ

アスナス:なんだ、どうなっているのだ

マイラ :なに?どうしたの?

キラ  :このたびは田村のおたげにお招きにあずかり、身に余る光榮に存じます

ルシアン:いまさら、見えついた追從なぞいらぬわ
     それより、なにを聞かせてくれる

キラ  :ごしょうもんがございすれば、何なりと

ルシアン:そうよな、ならば、パレリア哀歌でもやってもらおうか

デイラン:イリス樣もご鄰席されでおられるというのに
     よりんともいったいなぜ

マイラ :それならば、私も存じております、
     イニスワヌこんぎのしぎられた姬がそれでもなお戀人を忘れられず
     一目をしのんでおうせいをかさねてしまうという悲しい歌ですわね

サマラ :何も知らぬということとは
     それはそれで結構むごいものなのだな
     これではどちらにころんでもすくわれぬ

ルシアン:そうだ、それで最後には二人とも嫉妒に狂った夫にころされてしまうのだ
     まあ、自業自得ではあるがな

キラ  :かしこまりました

ルシアン:なぜだ あやつが犬貓にも劣る下種のはずなのに
     どうしてこの場の誰よりも美しく輝いて見えるのだ

ルシアン:さすがよな、あいも變わらず人をたらしこむすべだけはたけておるわ
     お前のようにあるじももたず、ひとつところに身を落ち著けもせずに流れ行く吟遊詩人を
     ルアールと呼ぶそうだな

キラ  :はい

ルシアン:そのルアールの中には歌よりも體で稼ぐやからがおるときいたが
     お前の一夜の寢はいくらだか

アスナス:陛下
     そのように一人にだけ長々とおこよはげられては他のものにしめしがつきません
     どうぞ、そのぐらいになっさて

ルシアン:いくらだと聞いておる
     いんばいくずれがいまさら氣取ることはあるまいが
     それともなにか
     男であれ、女であれ、抱かれてさえおればかねはいらぬか
     イリス、お前もさぞかくやしいかろうが、
     二年前お前のためならば命もいらぬとごうごうした男が今ではこの樣よ

マイラ :えっ?イリス樣とこの方が

ルシアン:どうだ?あいそうが盡きたか?それとも、懷かしさのあまりそのみがうずいて聲も出ぬか

アスナス:陛下、お戲れが過ぎます

ルシアン:どうだ?キラ
     いっそうのことを今宵お前を買い切ってだれぞに命じて腰がたたなくなるまでだかさて見るか
     それもいっきょうな

キラ  :ご容赦ください
     おうせいのごとく今はその日暮のルアールにございます
     私如きでせんのものをあいてに戲言もすぎればおなにかかわりましょう

ルシアン:ジオウの帝王たる面目など遠の昔につぶれておるか
     飼い犬に手を嚙まれた男の阿呆ずらを天下にさらしてきたのだ
     いまさらないて惜しむなどもったおらぬわ
     下種には下種の生き樣があろう
     豎琴が二度と持てぬその腕を切り落としてくれようか

キラ  :それで陛下のお氣が濟まれるのですか

ルシアン:つらのかわもだいぶ厚くなったようだ
     まあ、いい
     人思いあっさりけりをつけたんだ
     酒の餚にもならぬわ
     それよりじゅわりじゅわりとまぶりころしてくれる

キラ  :いいえ、ルシアン樣
     二度目はないのです
     僕は二年前のあの夜に死んでしまいました
     後はこの身がただの土くれに戾る日を待つだけ
     それものそれほど先にことではないでしょうか
     ではこれにでさがらせていてもよろしいでしょうか
     
     まだ、まだだ、あの扉の向こう、向こうまで
     ルシアン樣の目の屆かぬところまで
     ここまでくればもう


サマラ :ジェナス、どうだ、キラの樣子は

ジェナス:一應わな、落ち著いたようだ

サマラ :一應とは、どういうことだ

ジェナス:この先、同じことがおきぬという保証はないということだ
     心の臟がひどくやられているようだ
     發作もこれがはじめではあるまい、おそらく

ジェナス:イリス樣

イリス :入っても構いませぬか

ジェナス:どうそ、お入りください

イリス :キラが倒れたそうですね

ジェナス:大事ありません
     緊張が過ぎての立ちくらみでしょう
     僕の部屋で休んでおります

イリス :そう、ですか

ジェナス:ちょっと樣子を見てまいりましょう

ジェナス:なぜ、こんなことに

キラ  :ここ、ジェナス殿

ジェナス:氣分はどうだ

キラ  :おてつをおかけして、申し譯ありません

ジェナス:丸藥を作っておいた
     二つ部だ
     忘れずにのむのだぞ

キラ  :ありがとうございます

ジェナス:これにこりて、あまり無理はせぬことだ

キラ  :分かっています
     でも今のうちにかせいで置かないと、冬が越せません

ジェナス:それはそうだろうが

キラ  :大丈夫です
     春はまだ遠い先のことですから

ジェナス:まさか

キラ  :ナイヤスの花吹雪を見たくて戾ってきたのです
     あれはほんとに見事で、どこに行っても夢に見ましたから

ジェナス:氣づいているのか

キラ  :まるで一面うつくれないの花が舞い散れようで
     あの花吹雪の中で靜かに眠れたならどんなに幸せだろうかと

ジェナス:違う、そうじゃない

キラ  :お氣づきになられたのでしょう
     僕はもうそんなに長く生きてはいられない
     多分、次の夏は望めないと

ジェナス:そんなことはない
     じおうのあるものを食べて、靜かにようじをすれば、元氣になる

キラ  :そうですね
     お心使い感謝いたします

ジェナス:そうやって全てを許してしまえるまでお前はいくのちをはくような絕望をかみ締めたのだ
     キラ、いいのか、それでほんとにお前はいいのか


アズリ :イリス樣、ぐっすりお休みになられるようにおごうたいでおきましょう

イリス :ねえ、アズリ、體の中に流れる血は犯した罪の重さだけよどんで黑くなるというけれど
     ほんとなのかしら

アズリ :えっ?なんとおっしゃい、、、

イリス :赤いわ、なぜ、どうしてこんなに赤いのかしら
     おかしいとはおもわない、ねえ、アズリ

アズリ :イリス樣、違う、違う、お手が血まみれです
     イリス樣、たけを、たけをお放しください

イリス :私は恥知らずな罪人なのに、どうして私の血はこんなにあかいのかしら

アズリ :誰が、誰が

イリス :私がキラをころしてしまうのですね

キラ  :お氣づきになられたのでしょう
     僕はもうそんなにながくは生きてはいられない
     多分次の夏は望めないと

イリス :私がキラをころしてしまうのです

サマラ :イリス樣
     イリス樣のたいがたい氣もちはサマラ重々承知しております
     身の置きどの朝はわれらにとって同じでございます
     しかし、一時のじょうにながされて
     心を緩めてしまえばうそで固めた壁におもわぬひび割れが生じてしまいます
     さあすれば

イリス :サマラ、あまたの美しい姬氣味には目もくれず
     兄上樣がなぜああもうマイラをいとわしく思いやそばすのか
     あなたはそのわけを知っていますか

サマラ :はぁ?

イリス :キラに似ているからです

サマラ :それは

イリス :マイラはキラに似ていてよ、見かけよりも、もっとずっと深いところで
     なのに、どんなに愛し合っていても
     キラには許されなかったことが兄上樣のおこううめるというだけで
     マイラには全てが許されるのですね
     神樣が人間を作られるときひとつの魂を半分にちにって
     二つの體に封印されるのだそうです
     それゆえに、割かれた魂は痛みに震え、かけた半分もほしいと求め
     互いが互いが悲しいほどに呼び合うのだそうです
     サマラ、あなたがそれをただの夢物語だとおもいますか

サマラ :イリス樣
     ルシアン樣は一人の男であられる前に、
     このジオウの帝王であらせられます

イリス :分かっています
    ジオウの帝王であらせられます兄上樣だからこそ
    その運命の相手にキラであってはならないと
    誰もがそうおもうのでしょう
    けれど、みんなの目の前でキラを辱めて憎むことしかできない兄上樣は
    とてもおつらそうでした
    これで永遠にキラを失ってしまったなら
    兄上樣がどうになるでしょう
    サマラ、ついになるで氣魂は半分に避けたままでは生きてはゆけないのだと私はおもいます

サマラ :それでも、一度うそでやみに封じたものは二度と暴かれてはならないのです

イリス :そうですね
     わが身をのろって、過去をくやんでも、
     それはただの自行憐憫でしかないのかもしれません
     ならば、私は、この眼をそらさずしっかりと自分の犯した罪の深さ追い屆けようと思います

サマラ :一生がかけて、つな拔きとおさねばならないうそがある
     國のゆくせいをうれうちゅうぜつからでた大儀の妙の振りかざし
     じょうのかけられ拔くキラを切り捨てたあの時からうそは一生消えぬ烙印どなったんだ
     なのに、われらはその重みの痛みもぬくぬくとしたひびの暮らしにながされて
     忘れ去ろうとしたのだ
     だとしたら、これは神がわれらに下されたてっついではなかろうか
     ねじ負けたうそがゆうがんではじけるほどがする
     今りんさやばかれてはならぬ覺悟
     きばをむいてもともとに暗いついていたとき
     われらはそれを塗りきれるのだろうか


アスナス:マイラ樣途中は、うばれておるな

サマラ :イリス樣がアッシュのズール公へこしにいれなされているから
     後宮がすでにマイラ樣付きの女官が仕切っております
     來る春べきにはルシアン樣とのご婚儀もひかえて
     マイラ樣にとってはまさにわがよの春でございましょう

アスナス:うん、陛下がわずか15才のズール公のもとへ姬を嫁がされるといい出されたときは
     みんなさすがに驚かせきな覺醒なんだが

ルシアン:ジオウにとって條件よい緣談というのはな、アスナス
     イリスの婚儀でなにを得るかではなく、
     そのことでこれ以上何も損なわぬということだ
     はちのぬわのりをしおって、あのばかめか

アスナス:しかし、まさか姬があのようには最後承諾なされるとはな

イリス :承知いたしました
     兄上樣にはおほねおりくださって
     お禮の申しようもございませんと伝えてください

サマラ :ご婚儀の姿はそれは見事のものでございましたな
     それぬの姬としてご自格と氣品にあふれておられました

アスナス:後は陛下とマイラ樣のご婚儀まで何事もなく時を數えるまでじゃ
     それで、キラのほうがどうなっておる

サマラ :今はナーマのおりのばん小屋に
     そこで冬を越すものと思われます

アスナス:やはりおのかのか

サマラ :せめて春まで
     それはキラにとっては最後の願いでありましょうから

アスナス:できることなら
     この先このレアファールカに明るい笑い聲は絕えぬことを祈りたいものだ


マイラ :ほんとにすごいことでございますね、ルシアン樣
     あんなところにも蛇使いが

ルシアン:王城の祭りは後三日もある
     それほど氣に入ったのならまた明日もつれてきてやろう

マイラ :ほんとでございますか

ルシアン:ああ
     明日はなにかお前が好きな
     豎琴のね、キラか

マイラ :ルシアン樣、どうかなさったのですか

ルシアン:デイラン、マイラをつれて先に戾っておれ
     サマラ、お前もだ

マイラ :ルシアン樣


キラ  :まだまだだな
     後三日
     稼げるうちに稼いでおかなければジオウの冬は越せない
     春になれば、ルシアン樣は妻を娶られる
     でも僕は、未練なのか
     ルシアン樣

ルシアン:相變わらず物乞いまがいの日錢かせにか
     そうまでイリスのそばにへばりついていたいのか

キラ  :人間の殘り火などしょせんこんなものなのかもしれない

ルシアン:なにがおかしい
     まただんまりか
     いつまでもそのてが通用すると思うなよ、キラ

キラ  :なにを、どう申し上げても陛下の沖に觸るのであれば
     口をつぐんで目をそらすいない
     すべはありません

ルシアン:口をつぐんで、かたるすべがないのなら
     そのくち、この手でこじ開けてくれるわ
     お前の大事なイリスはな、あの宴の後淺はかに手首を切ってはたようとしおった

キラ  :うそだ
     そんな、まさか

ルシアン:わが身をいくらなぶなれてもも痛くも寡慾もないが
     イリスのこととなれば、そうやってお前は顏色が變えるのか、キラ
     ならば、その顏がもっとゆがませてくれるわ

キラ  :おやめください
     ルシアン樣、ルシアン樣、お願いです
     ルシアン、、、

ルシアン:なけわめけ、取りつましたぞ、つらの顏は、おもさもむしにとってくれるわ
     いいぞ、キラ、もっと、もっとだ


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